- 1)響板の役割
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響板はピアノの魂ともいえる部分で、音にとって最も重要な部品です。 ハンマーが弦を打って出した音を大きく響かせる、スピーカーのような役割がありますが、ピアノの音色に大きな影響を与えます。
- 2)響板が割れる
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ヴィンテージ/アンティーク/中古ピアノやオルガンでは、響板が割れる、という現象があります。100年くらい経ったヨーロッパのピアノには、よくある現象です。割れていない響板の方が少ないくらいです。 響板の割れは、修復可能です。弦や鉄骨を外さなければならないので大がかりな修復となりますが、難しい仕事ではありません。
- 3)どうして響板が割れるのでしょうか?
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響板は木で出来ているため湿気を吸って膨らんだり、乾燥して縮んだりします。 それを繰り返すと、板のつなぎ目から割れが生じます。
これは100年も生きているピアノにとっては避けられない現象です。
100年前と今とでは、人間の生活環境が変わりました。100年前は、今よりも湿度の高い環境で人々は生活していました。今のような気密性の高い家に住んでいませんでしたし、今のような乾燥する暖房器具を使っていませんでした。
ですから、そのような中で生まれ育ったピアノの木が、今の乾燥した環境の中で割れてしまうのは、当然のことなのです。 - 4)響板の割れは致命傷なのでしょうか?
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そんなことはありません。古いピアノで、響板が割れていても良く響き、美しい音色を出しているピアノはたくさんあります。
理屈では、音が響板を伝わるときに割れの部分で振動が止まってしまい、響きが減るので、響きは割れている響板より割れていない響板の方が良いことになります。
でも実際は、割れていないピアノより良く響く、割れているピアノがたくさんあります。
ピアノの音が良く響くかどうかというのは、響板が割れているかいないか、だけでは決まりません。他の様々な要因が合わさって、音の響きは決まるのです。
響板の割れは致命傷ではありません。
響板が割れたまま、何十年も問題なく演奏可能なピアノはたくさんあります。
むしろ致命傷は、ピン板が傷む場合の方にあります。ピン板が傷むとチューニングピンが緩み、調律を保てなくなるからです。そうなったら、大がかりな修復をせざるを得ません。
逆に言えば、ピン板さえ良い状態であれば、響板が割れていても、大がかりな修復をしなければならない状態ではないのです。
割れの状態によっては、ピアノを弾いたときに雑音が出ることがあります。
調律師がその場で応急処置をすれば問題が解決することもありますし、ひどい場合は割れを修復することが必要になります。
響板が割れているピアノを買うときには、そのようなリスクが付いてきます。
何年後か、何十年後かに大がかりな修復が必要になる可能性があります。
ただ、比較的湿度が高めの環境を保つことができれば、リスクはかなり少なくなります。